アメリカ旅行3〜WTC〜

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  もう16年前になった9/11、中学生の時だったけれど、夜のテレビでニュースステーションが報じる事件の様子をリアルタイムで見ていたのを覚えている。ツインタワーがあった場所は、ふたつの大きな「穴」のモニュメントになり、周辺で再開発が現在進行形で進んでいる。前掲のガラス張りの高層ビル「One World Trade Center」や、上の写真の恐竜の化石のような建物(地下鉄の駅とショッピングモールを兼ねる)がアイコニックに目新しい景観を作り出している。

 それにしても現地に立ってみて感じるのは、あのテロの規模とインパクトの大きさだ。ウォール街からほど近く、タイムズスクエアからも大通り沿いに十分見通せる場所。(というか、通りを見通すとWTCが見える都市設計になっている。)そんな場所のビルに飛行機がつっこんで、高層ビルが完全に崩壊する。周辺のビル群も崩壊してガレキになってしまった。タイムズスクエアからWTCを見たときにその規模が実感を伴って、戦慄した。

  自由の女神行きの船着き場があるがあるマンハッタンの南端から、ウォール街を通りWTCまで歩く。自由の女神(とエリス島)に想定より時間を取られてしまって、WTCについたのはもう夕方になってからだった。最初に入ってみたホネホネしいWTC駅は、まだ出来たばかりの内装工事中で、抜けたいところが行き止まりになっていて通れなかったりしながら若干迷った末、「穴」のモニュメントに行き着く。穴の周囲には犠牲者の名前が刻まれていて、所々名前のところに花が挿してあったりする。

 最初に入ったのは、WTCに隣接する消防署に併設された小規模な記念館(9/11 Tribute Center)。多分消防署の施設で、消防士の奮闘に焦点が当てられていて、事件当時の記録映像や遺留品が展示されている。あと、語り部のような人がいて、当時の体験を話してくれるスペースがあった。この建物の外側には、まるでギリシャかエジプトのレリーフのような大きなブロンズのパネルが道路沿いの壁に展示されていて、消防士が事件の中消火活動をする様子が描かれている。このあたりから、日本の感覚とはちょっと違うぞという印象を受け始める。

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 そして、辺りがすっかり暗くなってから、9/11の記録・祈念施設としてはメインとなるNational September 11 Memorial & Museum を訪問した。ぺしゃんこになった消防車や、恐ろしい力で曲がった巨大な鉄骨、あるいは追悼をテーマとするアート作品などが広い空間に点在している。その中で圧巻だったのは、ドキュメンタリー番組のように事件発生からの各所の動静を分刻みで記録た展示室。臨場感あふれる展示の中には、実行犯が爆弾の作り方を記したノートの実物などもあり、犯人やアルカイダのバックグラウンドを説明する映像など、9・11を悲劇的な惨事としてだけでなく、人が起こした「事件」として克明に描き出す展示内容になっている。

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  ツインタワーのガレキの撤去作業で、最後に取り除かれた鉄骨。この鉄骨は当時、上から星条旗がかけられ、正装の警官が囲む厳かなセレモニーの中でゆっくりと現場から運び出された。鉄骨にペンキで描かれているのは撤去作業に従事した消防隊のサイン。

 記憶か、忘却か。比較するのがふさわしいかどうか迷うところだけれど、対照的だと思わずにはいられないのが、東日本大震災のあとの津波で流された地域の撤去作業だ。アメリカがこの事件を国民の記憶として祀った背景には、言うまでもなく当時彼らが戦争をしていたということと密接に関係している。人は共通の敵がいなければ、共通の記憶を持つことが出来ないのだろうか。

 すごく厳かな気持ちになった。モニュメントのまわりを歩く人達も、一歩通りを渡ればまたニューヨークの喧噪になるのに、ここでは流れる水の音が空気を制していて、静けさが共有されている。この場所は訪れて本当によかった。アメリカの慰霊の本意に触れた気がした。

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 夜はライトアップされる。